おだんごスープ/角野栄子(文)・市川里美(絵)”おだんごスープ”



「おだんごスープ」、タイトルがとってもかわいらしいです。文は大好きな角野栄子さん。「ピザパイくんたすけてよ」とか、「スパゲッティがたべたいよう」とか、角野さんの作品はおいしそうなものがたくさん出てきますね。

「あったかいスープが のみたいなあ。
おばあさんがつくってくれた おだんごスープが
のみたいなあ」
「おだんごスープ」p.4より引用

おばあさんが死んでしまって、ひとりになったおじいさん、おばあさんが歌いながら作ってくれたおだんごスープを思い出しながら作ってみるけれど、どうもおばあさんが作ってくれたように、うまく作れません。


何回も作ってみて、作るたびにスープを楽しみにしてくれるお客さんが増えて、だんだん、おばあさんのスープの作り方を思い出すおじいさん。

ぐらぐらおゆに おにくのおだんご まるめて ぽとん、
小さいじゃがいも かわむいて ぽとん、
小さいたまねぎ ころころ ぽとん、
えーと それから、にんじんわぎりで くるくる ぽとん、
さいごに しおとバターとこしょうを少々
「おだんごスープ」p.24より引用


おおきなお鍋でたくさんのスープを作るようになる頃、おばあさんのおいしいスープが完成します。


おだんごは鶏肉にしました。万能調味料塩麹とこしょうでシンプルに。もちろん、ただの塩でもOKです。つなぎに卵とパン粉を少々。ぐらぐら煮立ったお湯にぽとん、ぽとんと入れていきます。おだんごを入れ終わったら、にんじん、たまねぎ、じゃがいもをぽとん、ぽとんと入れます。



野菜がやわらかくなるまでぐつぐつ煮て、塩とこしょうとバターだけで味をつけてできあがりです。



本当に、素材の味だけで楽しむシンプルなスープ。でもびっくりするくらいやさしくておいしいスープになりました。鶏肉と野菜のから出た出汁だけで、こんなにおいしくなるなんて。今までいろいろな調味料に頼りすぎていたのかな。バターを入れることで甘いコクが出て、野菜の味がしっかり伝わる、簡単でおいしくてやさしい、これからの季節にもピッタリのスープです。



物語のはじまりはとても悲しいけれど、おばあさんのスープに近づくにつれて、そのあたたかいスープで心も身体もあたたまっていくような、すてきなおはなしです。夫婦だったり親子だったり、家族や仲間と囲む食卓のあたたかさって、大切で、しあわせなものなんだなと思える作品でした。


おだんごスープ

おだんごスープ