想像力・判断力・持続力「100,000年後の安全」



この間、飲み屋さんで偶然隣りになった、新聞社と出版社のお勤めの方に
チェルノブイリの話や、原発の話をうかがいました。興味深い話でした。
25年経った今でも、放射線で汚染された薪を燃やすことやキノコを食べることによる
内部被ばくも続いているのだそうです。
現在の日本の状況について、原子力発電所のこと、放射性廃棄物のゆくえのこと、
テレビや本、映画、誰かに話を聞いたり、話し合うこと、いろいろな方法で
これからわたしなりに、知り、勉強していきたいと思っています。


100,000年後の安全」を観てきました。
この映画はフィンランドに建設中の、高レベル放射性廃棄物の最終処分場についてのドキュメンタリー。
施設の名前はオンカロ。”隠された場所”という意味です。
高レベル放射性廃棄物は生物に対して安全な状態になるまで、10万年間かかると言われていて
ロケットで太陽に打ち込むのが、誰にも影響をあたえず処理できる方法であるとも言われているようですが
ロケット打ち上げ時の事故などの可能性を考えると、現実的ではないらしいです。
このオンカロは地上や海のように自然災害や人災に影響されず、
火山活動や断層活動の影響も受けないだろうとされる地下500mの岩盤層に作られていて、
2020年には正式運用開始、この施設が核廃棄物で一杯になる100年後に完全封鎖する予定。
つまり全くの”隠し場所”。管理の必要のない自己完結した処理場であることが必要だと言うけれど
これでは処理でなく、放置なのではないのだろうか?と愕然としました。
そもそも10万年単位で安全であると考えられる地層があるのだろうか。
少なくとも、日本にそんな場所なんて、ない。


そしてこのオンカロの存在を、意味を、10万年後の未来に、伝えることができるのか。
今から10万年前と言えば、ヨーロッパにはネアンデルタール人たちがいた時代。
彼らの言葉を、今のわたしたちがどれだけ理解できるだろう?
オンカロ建設関係者の話では、6万年後にはまた氷河期が来る推測を立てているという。
だとしたら、氷河期が来て、人類が滅んで、何もかもなくなった世界の後に
また新しい生命体が現れ、新しい文明が発生したとして、その後は?
恒久的な知識の伝達を義務付けるとか、文書館を作るとか、絵で伝えるとか、
およそ現実的だとは思えない方法の可能性を語る関係者たち。
「ここは危険だ。絶対に触れるな。立ち去れ。」
そのようなメッセージを、文字で、絵で、残したとして、
それを未来の誰かが受け取ったとして、果たして信じるだろうか?
古代の墓を暴くように、明らかにしようとするのではないだろうか?


10万年先まで、忘れ去ることを忘れてはならない話。
地下500mの岩盤を爆破する音は、地球が壊れる音に聴こえた。恐ろしかった。
人は、消せない火を手に入れてしまった。
コントロールできなくなっても、自分達でどうにかしないと、誰も助けてはくれないこと。
こういう事実の上に、今の生活が成り立っていることを知り、考え、選ばなくてはならない。
10万年後を想像することは、とても難しい。けれど、子供、孫の世代を想像していくことはできる。


まだまだ、わたしは、知らなければならないことがたくさんある。
どれだけ自分がいろいろなことに無関心でいたかということに気付くこの頃。
想像すること。判断すること。そして、持続すること。


考え続けないと、気を抜いていたら、いろいろなものに取り込まれてしまう。
今、この瞬間も。


この恐ろしいものを、日本ではどうしているのか。
これから、漠然とではなく、きちんと知っていきたいと思っています。


映画『100,000年後の安全』公式サイト
http://www.uplink.co.jp/100000/