「ミツバチの羽音と地球の回転」スウェーデン―祝島 エネルギーの未来を切り開く人々


 もう先月の話になってしまいますが、オーディトリウム渋谷で「ミツバチの羽音と地球の回転」を観て来ました。この映画は「ヒバクシャ――世界の終わりに」(2003)、「六ヶ所村ラプソディー」(2006)と、原発や核関連施設の映画を取り続けてきた鎌仲ひとみ監督のいわば3部作の3作目。わたしが観た回は、映画上映後に、鎌仲監督と、ap bank幹事で環境活動家である田中優さんのトークショーがあったため、平日の昼間だというのに立ち見まで出るほどの盛況でした。今この状況下、みんなの原発への意識が高まっているんです。わたしは上映20分前に着いたものの、場内に入れるか入れないかのギリギリで、なんとか通路で座布団という席を確保しました。


 映画は瀬戸内海に浮かぶ、山口県祝島(いわいじま)の島民による原発反対運動を追ったドキュメンタリーです。原発建設が予定されているのは山口県上関町田ノ浦の上関原発祝島はその対岸3.5kmの場所にあります。この地に原発を建設する計画が持ち上がったのが1982年。以来「上関原発を建てさせない祝島島民の会」はもう30年近くも建設反対運動をしています。半農半漁の祝島では、田ノ浦が埋め立てられるだけでも、かけがえのない豊かな漁場を奪われることになってしまいます。また、原発が稼働すれば、CO2を出さないとはいえ、原子炉を冷やすため、7度上昇した海水を毎秒190トン絶えず放出することになり、海の生態系は崩れるに違いないのは素人でも想像が出来ます。埋め立て反対のため、漁船で立ちはだかる島民たちに、「みなさんが心配しておられるような、海が壊れるようなことは絶対にありません。絶対と言っていいほど壊れません」と呼びかける中国電力の社員には怒りを通り越してあきれる限りでした。


 舞台は変わり、自然エネルギーの開発が進むスウェーデンの姿は、不要な木材を利用し、糞尿をガスにし、風を電気に変えて生活する人々の生活。風力で作られた電気で自動車を走らせている男性は、原子力で作られた電気は使いたくないから、環境認証のついた電気を選んで買っていると言います。どの電力会社から電気を買うかが選べるわけで、日本では選ぶことができないと教えると、とても驚いていました。太陽光や波力を利用した発電についても話が及びました。日本のエネルギー政策は、もう40年以上も原子力を強力に推進し続けています。この映画は、今この日本で起きている原発建設問題を見せるとともに、環境、ひいては人間を痛めることのない自然エネルギーの導入をしている現実という希望も見せてくれました。自然エネルギーの開発技術を持つ日本で、これほど自然エネルギーが主力のエネルギーになることを阻む原因はいろいろあるのだと思います。自然条件に左右される安定性というような問題もあれば、日本独特の送配電網の問題や制度の問題も。企業や国は省エネをうたいながら、家庭の電気料金は使えば使うほど単価が高くなるのに、事業系の電気料金は使うほど電力単価が安くなる、という価格体系については首を傾げるばかり。


 3月11日の大震災後、中国電力山口県からの要請を受けて、上関原子力発電所建設準備工事について建設予定地での作業を一時中断しています。そして山口県周南市議会が、上関原発の建設中止を中国電力に申し入れるよう県に求める意見書案を可決しました。上関原発計画が浮上してから約30年の間で、建設中止を求める公式な意見が山口県内の自治体の議会で議決されたことは、今回が初めてのことだそうです。起こってはいけない事故がきっかけになってしまいましたが、状況も、人々の意識も、間違いなく変わってきています。


6月4日から、渋谷ユーロスペースでアンコール上映がはじまりますので、興味がある方は是非ご覧になってみてください。


映画『ミツバチの羽音と地球の回転
http://888earth.net/index.html



ヒバクシャ ~世界の終わりに~ [DVD]

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六ヶ所村ラプソディー [DVD]

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 わたしの働く図書館では、震災後、地震津波原発のコーナーを作りました。



利用者に興味を持ってもらうのはなかなか難しいのですけれど。


 毎日の生活のなかで、まるで原発をないもののように、意識することなくふんだんに電気を使い過ごしてきたわたしは、今この状況だからこそ真剣に考えて行かなければならないと感じています。というか、未来のエネルギー問題考え直すには、今この時を逃してはいけないと思っています。いろいろな自然災害や事故は起こりうるもので、そういうときに何処かの誰かが、自分たちが使う電気のために、それこそ命の危険を感じながら過ごさなくてはならない状況や、使った後の廃棄物の処理の問題など、いろいろなことを考えた上で、やっぱりわたしには受け容れ難いと思うのです。それについてのアクションをどうしていけばいいのか、まだまだ考えることはたくさんあるけれど、無関心でいないようにし続けたいと思っています。


今こそ、エネルギーシフト――原発と自然エネルギーと私達の暮らし (岩波ブックレット)

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