被災地短期ボランティア ― 宮城県石巻市

3月11日の大地震が起こってから、地震津波の被害や、原発事故、
いろいろなことが起きて、自分に何ができるのか、いろいろ考えました。
みんな、募金したり、支援物資を送ったり、節電したり
原発のことを考えなおしてみたり、この大地震で起こったことについて
それぞれの人たちができる範囲でアクションを起こしていると思います。
わたしも、考えてるだけで、もやもやしててもしょうがないし
まだまだ大変な状況で生活をしている人がたくさんいるなら
何かお手伝いをさせてもらいたいと思い、週末を利用して宮城県石巻市へ行きました。


今回はNGO団体ピースボート短期現地支援ボランティアに参加しました。
以前は1週間以上の滞在ができる人のみの募集だったので、なかなか条件的に難しかったのですが
ゴールデンウィークを境に、ボランティア参加者が1/5程度に減ってしまったということで
短期参加者の募集が始まっていました。
金曜日の夜に東京を出発して、土曜日早朝に石巻に着いてから、土日の2日間活動して
月曜日の朝、バスで東京に帰るというスケジュールです。
参加条件は、”18歳以上の体力に自信のある男女。
寝袋、作業着の一部(安全長靴、防水ヤッケ、ヘッドライト、防塵マスク)、
活動日数分の食料を持参できる方 ”ということだったので、わたしは
安全長靴、防水ヤッケ、防塵マスクだけ買えばいいだけでした。


寝泊まりは石巻市新館というところの、おそらく衣類工場であった建物で、
建物の外に簡易トイレが並んでいました。
ちなみにこの建物には電気が来ていないので、夕方から夜10時まで発電機で電気を供給していました。


   


工場内の寝袋で雑魚寝。男女のエリアは分かれています。
建物の中だし、床に畳のようなマットが引いてあるので、フジロックの雨のテントサイトより
ずっとずっと快適でした。わたしがいた時のボランティアスタッフは、多分100名くらいです。



これは寝泊まりしていたところの隣りの建物。まだまだこういう建物はたくさんありました。
わたしたちの活動は清掃活動が主で、徒歩か自転車で行ける範囲の公園や住宅の泥掻きがお仕事でした。


1日目は公園の泥掻き。小さな公園を子どもたちが遊べる状態にするのが目標で
15〜6人くらいで、1日がかりでとにかくスコップなどでヘドロを掘り出したり
ガラスや津波で流されてきたものや割れたガラスなどを取り除く作業をしました。
スリッパ、靴下、おもちゃ、写真、洗面道具、CDなど、公園にあるはずがないものがたくさん出てきました。
とにかく泥を掻いて土のう袋に詰める、を延々続けました。



これはほんの一部です。使ったことのない道具に慣れず、初日はとにかく大変だったけれど
途中で助っ人に来てくれた方たちが何日か既に作業をされていたので
いろいろノウハウを教えてもらって、なんとか終りが見える状態になって1日目の作業終了。


2日目は個人のお宅のお庭の泥掻き。家の中は作業済みで、今回はお庭だけでした。
でも、1日目になんとなくコツをつかんできたので、この日の作業はチーム内で役割分担ができたり
かなり作業は早く進んでいる手ごたえがありました。



そのあと、少しだけ側溝のヘドロ掻き作業をさせていただきました。
これは悪臭もするし、汚れるし、危険だし、大変な仕事でした。
汚い、臭い、危険、キツいの「4K」なんて言われていたくらいです。
なんといっても側溝のヘドロは水分が多くて、土のう袋に入れにくく、
乾いた土と練って、一緒に入れていたらしいのですが、道路も汚れてたくさん水を流して
洗わないと悪臭が残ってしまうので、とても大変だったそうなんですが
某企業のボランティアチームが編み出した方法によって、画期的に作業がはかどるようになったとか。
その方法がこの”もんじゃ方式”!


まず、乾いた土を土手状に広げて、その中にヘドロをいれます。



そしてまさにもんじゃを作る要領で土とヘドロを混ぜて、土のう袋に入れます。



これがなかなか作業が進まずとても大変。でもそのままにしておくと、
雨がたくさん降ると、きっと水があふれてしまうし、とにかく匂いがひどくて
夏に向かって暑くなる季節は、そのままにしておくと本当に大変だと思います。
2日目の作業はこの側溝のお掃除を少しやらせていただいて終了。


作業後は19時の門限までは自由行動なので、少し街中を散策してみました。
来てみてわかるのは、まずヘドロの悪臭。そして泥が乾いて舞い上がる砂埃。
マスクなしでの生活はかなり厳しいと思います。
被害は海に近づくほどまだまだひどくて、歩道が陥没していたり、瓦礫だらけの家や工場があったり。





おそらく、被災地の中でもかなりのボランティアが入っている石巻ですら、この状態。ショックでした。
テレビの報道はだんだん減ってきているけれど、他にもまだ手もつけられない場所がたくさんたくさんあるはず。
夏になると、作業する人も熱中症に気をつけたりしないといけないだろうし
本当に早いうちにできる限り作業を進めないといけないんだな、と実感しました。
作業中、地元の方々に「おつかれさまです」と声をかけられることが多かったです。
疲れてても、元気が出ました。みなさん強く、生活をしていらっしゃると思いますが
やっぱり地元の方たちだけでは人手は全然足りないです。


こういう状態がまだ続いてしまうという現状を、自分がふつうの生活に戻ったからといって
忘れちゃいけないと思ったし、しっかり自分の目で見ておきたいとも思いました。
でも、ただ自分本位に見に行くだけでは失礼だし、せめて、少しでも何かの役に立ちたいと思いました。
だから、このボランティアは被災地の方のお手伝いだけでなくて、自分のためでもありました。
本当に行ってよかったと思ったし、また時間を作って参加したいと思います。


一緒のチームで作業をしたみなさんにも本当に助けられたし
みんな前向きで一生懸命で、一緒に作業をしていて本当にがんばれました。
そして帰り際、ピースボートのスタッフの方に、是非また来てください、と、
この状況を、どうぞ周りのひとたちに伝えてきてください、と言われました。
うまく伝えられるかはわからないけれど、こうして記録してみました。


これからも、一日でも早い復興を祈りつつ、微力ながら、お手伝いを続けて行きたいと思います。





・・・



作業が終わった夜、ふと頭によぎった「天使たちのシーン」のメロディ。


”長い夜をつらぬき 回ってくサークル
君や僕をつないでる 緩やかな止まらない法則”


わたしはまたいつもの日常に戻って、でも、その日常は、
石巻やほかの何処とも地続きだってことを忘れないで過ごそうと思う。