西の魔女が死んだ/梨木香歩”おばあちゃんの庭のキンレンカのサンドイッチ”
児童文学作家の梨木香歩さんの作品「西の魔女が死んだ」はとても大好きな作品で
時々手にとって読みたくなる作品です。
中学生のまいとイギリス人の祖母とのひと月ほどの生活がメインのお話で
タイトルの「魔女」とはそのイギリス人のおばあちゃんのこと。彼女はちょっとした魔法が使えるんです。
ハリー・ポッターみたいなファンタジーの世界の魔法ではなくて
それは昔から自然とともに生きる人が身につける知識や勘みたいなものかなと思います。
おばあちゃんと作るワイルド・ストロベリーのジャムの美味しそうなこと。
たらいで足踏みして洗ったシーツに香りをつけるためにラベンダーの茂みに干すこと。
よく眠れるおまじないとして、部屋の柱にたまねぎを吊るしたり、
おばあちゃんの家で過ごす毎日は、自然にあふれていて、静かでささやかだけれど
とても温かくてやさしくて豊かな日々。
この物語を読んでいるあいだじゅう、ふたりの暮らす家や庭の風景がどんどん浮かんできて
それがとても幸せなイメージだったので、ずっと浸っていたい気持ちになるんです。
そんなおばあちゃんの家で出てきたサンドイッチ。
「サンドイッチをつくろう。裏の畑にいってレタスとキンレンカを採ってきて」
「はーい」
まいは明るく返事をして、外へ飛び出した。
ナスタチウムとも言って、花も葉も食用にできます。
サンドイッチに入れる葉っぱはこんな感じです。蓮の葉っぱみたい。
レタスを一枚ずつ手のひらに載せ、ぱん、ぱんと水気を切ると同時に平べったくした。そして、適当な大きさに裂いて、ママが並べておいたパンのうち、二枚のパンの上に載せた。それから冷蔵庫からハムを取り出し、その上に一枚ずつ載せていき、キンレンカの葉も同様にした。
残りのパンの上にはレタスだけ何枚も置き塩を振ったり、いり卵だけ置いたりして、端からパンをかぶせていった。そして、まな板の上に載せ、ざくざくと耳もとらずに無造作に三等分にしていった。その間、ママは沸騰したお湯をやかんからポットに入れ、紅茶の準備をした。
ちょっと葉っぱだけかじってみると、ちょっと苦味と辛味のある感じで、わさび菜とかそういう感じ?
ハムの上にキンレンカを並べるとこんな感じ。
まいもサンドイッチを手に取り、キンレンカの葉だけ抜いた。このワサビのような、カラシのような、ぴりりと青臭い味がまいは好きではなかった。ママはまいがそれを抜いても何も言わなかった。
ちょっとキンレンカの量が控えめ過ぎたかもしれません。
わたしはもうちょっとピリッとしててもいいかな、と思いました。
ただのサンドイッチなんですけれど、庭の花や葉を摘んで入れるだけで
なんだかとても豊かな気持ちになれました。また大葉とかバジルとかも植えようかな。
そしてこの作品は2008年に映画化もされています。
まだ観ていませんが、おばあちゃんの庭がどんなふうに映像化されているのか、とても楽しみです。
学校に登校できなくなって転校することにしたまい。
逃げ出すようで自分は弱かったというまいに、おばあちゃんが言った言葉。
「その時々で決めたらどうですか。自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか」
忘れていたけれど、自分でページに折り目を付けていました。
凛とした優しい言葉に満ち溢れた物語です。
- 作者: 梨木香歩
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