じつはわたくし、こういうものです/クラフト・エヴィング商會”冬眠図書館のシチューとコッペパン”
出会ってから幾度となくページを開く本のうちのひとつです。
18人の登場人物が、それぞれ自分の職業を紹介する、という本なのですが
それらの登場人物、職業、すべてが架空のお話です。
それでも、小道具や設定のあまりの細かさに、本当にいるんじゃないかと少し疑いたくなるくらい。
どの職業も魅力的なのですが、わたしが「なりたい!」と思ったのはやっぱり、冬眠図書館のシチュー当番。
そうです。<シチュー当番>というのは、文字通りシチューをつくる当番ということです。
でも、その前にまず<図書館>のことからお話ししないといけませんね。
わたしは<冬眠図書館>という、ちょっと変わった図書館の司書です。
ええ、そうです、公立のものではありません。ですので、本の貸し出しは2週間で1冊100円かかります。ごめんなさいね。無料ではないんです。でも、夜の8時に開館して朝の8時まで夜どおしやっているんです。
こんなの他にないでしょう?
規模も大きいですよ。なにしろ司書が必要なくらいですからね。
そんなわけで、冬眠図書館には司書が4人いるらしい。
それぞれ、コーヒー当番、コッペパン当番、ブランケット当番、シチュー当番を担当しているのだそう。
冬眠図書館でシチューとコッペパン。ふかふかのブランケットに眠気覚ましのコーヒー。
ああ、本当にこんな図書館があったら、迷わず冬眠してしまいたい。
冬眠もしたいけど、冬眠図書館の司書にもなりたい。
そんな冬眠図書館員になるべく、あたたかいシチューと、コッペパンを作ってみました。
急に秋がやってきて、お鍋で煮込んだり、オーブンで焼いたりが苦にならなくなってきたところですし。
まずはコッペパン。パンづくりで最大の難関のこねる作業はもっぱらフードプロセッサー頼みです。
レシピは こちらのサイト を参考にしました。
わが家はクイジナートのものです。こねる作業が2分足らずで終わってしまうすぐれもの。
一次発酵前はこんな感じ。
そして、パン生地を発酵させている合間にシチューを作ります。
冬眠図書館のシチューはブラウンシチューもあるそうですが、やっぱりクリームシチューが気分。
ホワイトソースもバターと小麦粉からつくりました。簡単にできます。
中に入れる具は何でもおいしいけれど、やっぱりお肉は鶏肉。
そしてじゃがいも、にんじん、玉ねぎは基本。きのこを入れるときはたいていしめじだけどできればマッシュルームにしたいです。
シチューをことこと煮込んでいる間に一次発酵終了。
常温で発酵するには少し涼しかったので、ボウルをタオルでぐるぐる巻きにして1時間たつと、こんな感じ。
もっちもちで、ほんのり温かくて、イーストのいい匂い。これを触るのもパン作りの楽しみのひとつ。
成形して、二次発酵して180℃のオーブンで14分。
6等分するときに、重さを計らず目分量だったので、大きさはバラバラ。
6つ全部を一度に焼いてしまったので、細長くできず、コッペパンにしてはずんぐりむっくり。
これも愛嬌があっていいかな(笑)
焼き立てのパンをふたつに割ったときに、ほわっ、っと広がるいい匂いがしあわせ。
あったかいシチューと焼き立てのパンでおなかがいっぱいになってしまったら
少し濃いめのコーヒーで眠気をさましてたっぷり読書がいいですね。
ああ、本当にこんな図書館があったら素敵。
冬眠図書館の司書だけではなく、他にも魅力的なお仕事がたくさん出てきます。
月の光を売る月光密売人、ひらめきランプ交換人、時間管理人、
抜くときに折れてしまったコルクを助けるコルク・レスキュー隊などなど。
その中に出てくる「バリトン・カフェ」のコーヒー豆を、ぜひ冬眠図書館のコーヒー当番さんに使ってもらいたい!
バリトン声のマスターが毎晩「カラマーゾフの兄弟」を少しづつ読み聞かせて
「カラマーゾフ」的に「バリトン化」したコーヒー豆。
カラマーゾフ的?バリトン化?よくわからないけれど、ぜひ、飲んでみたい。
そういえば、モーツァルトを聴かせて熟成させるワインなんていうものがあったし、
あながちなくもない話かも(笑)
そして実は、巻末に本に出てきた方々の「本当の」お仕事の紹介があるのですが
架空の職業と遠からず、といった方々もいるあたり、心にくい配役だなあ、と。
クラフト・エヴィング商會による、ディテールの凝った、大人の愉快な悪戯。
人を「あっ!」とちょっぴり驚かす。騙されちゃうんだけど、でもうれしい。そんな感じ。
クリスマスの夜に親が子どもに、プレゼントを持ってくるサンタクロースの演出をするような
きっとそんな、気分で本づくりをしているに違いない、と思うんです。
みんなが楽しめるように、力いっぱいバカになれる人とか、一生けんめいな悪ふざけできるのって
(もちろん言うまでもなく、善意のバカで、善意の悪ふざけですけれど)
すてきだなあ、って思います。
- 作者: クラフト・エヴィング商會
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2002/02/01
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