月と菓子パン/石田千”いろんな豆を少しづつゆでる”

「月と菓子パン」というタイトルになんとなく魅かれて手を取ったら
装丁は山本容子さんで、これがまたとても素敵だったので読んでみた本です。
CDもだけど、本については特に結構ジャケ(装丁)買いしちゃったりします。
でも、ジャケ買いって結構アタリが多かったりもするんですよね。
「月と菓子パン」はハードカバーも文庫版もどっちもすてきな装丁です。


下町で暮らす石田千さんのゆったりと流れる毎日のいろいろを綴ったエッセイです。
でもふわーっと流れているのではなく、石田さんのすっと一本通った
芯の強さというか、ぶれなさみたいなものが、とても心地いいんです。
けして特別なものが出てくるわけではないのだけど
美味しそうなものがたくさん出てくるのも、いいところ。

 日中ふらふらしているあいだにもどしておいた豆を、晩になってゆでる。
 乾物をもどすのは、おもしろい。でかけるときに水の中に放りこんでおくと、ぼわんとふくらんでいる。しいたけも大きくなるからたのしい。貝柱やえびもいい。だれもいない台所に、生き物が動いているようなのがいい。
 (中略)
 いろんな豆をすこしずつ混ぜてゆでる。とら豆、緑豆、ささげ、白いんげん、金時。大きさもかたちも、ほんとうはゆでる時間もちがうのだが、気にせずいっしょに放り込む。


お豆の売り場にいくと、本当にいろんな種類がたくさんあって、どれもこれも欲しくなってしまって、困ります。
うずら豆とか、シャチ豆(!)とか、ひよこ豆とか、かわいい豆がたくさん。
なんで動物の名前の豆が多いんだろう。また今度買ってみよう。



今回はとら豆、緑豆、白いんげん、金時、小豆を一緒にお鍋にいれました。
いろとりどり。かたちもいろいろで、見ているだけで楽しくなるお鍋。
とら豆は、初めて買った豆。模様が虎模様だから「とら豆」です。火が通りやすくて煮豆に適しているのだそう。
赤紫色のは金時豆いんげん豆の種類のひとつ。甘納豆になったりします。緑豆はもやしになる豆。

 豆がゆらゆらしている鍋のなかは、色とりどりのモザイクになる。



一晩経って、ぼわんとふくらんだ豆が、ゆうらり。

ゆでた豆が、スープやカレーにいれたり、おかゆにいれたりする。ひじきの煮物にもいれる。はちみつをかけて冷たくして食べるときもある。ウィスキーのお湯割りにあう。寒い晩に、頬の力がぬけるような味がする。


味を付けずに豆を茹でると、そのあといろいろなお料理に使えるんですね。
スープやサラダに入れるだけにしておけば、本当に簡単で便利。目からウロコ。
わたしはキーマカレーに入れてみました。豆のカレー、好きなんですよね。
カレーにはひよこ豆とかがスタンダードかなと思っていたけれど、なんでもおいしい。



そして、冷たくしてはちみつをかけてみる。素朴で滋味深いおやつになりました。



今度はウィスキーと一緒に試してみよう。


月と菓子パン

月と菓子パン


月と菓子パン (新潮文庫)

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