図書館革命/有川浩 ”はじめてのデートで飲むカモミールティー”


図書館で働くせいか”図書館”のキーワードには思わず反応してしまうのですが
数年前に一度「図書館戦争」を手に取った時には、数ページ読んだところで
文体とノリがいまいち合わず、読むのをあきらめてしまっていた本です。
本を読むタイミング、というのは人それぞれで、同じ本でも読むタイミング、というか
その時の自分のコンディションでおもしろい・おもしろくないがずいぶん左右されるもので
それは、子どものころに嫌いだった食べものが、今食べたら大好きな味だった、というような感覚で
数年経った今、この本の受け容れ体制が整ったようです。


図書館戦争」から始まる有川浩さんの図書館シリーズ
図書館戦争」「図書館内乱」「図書館危機」と続いて最終巻が「図書館革命」。
そのあと別冊として更に2巻出版されています。
名前はもちろん知っていたし、手にも取ったことがあるけれど、アニメ化までされていた意外な人気作。
医者ものや刑事もの、派手なファッション業界やレストランなどのグルメものは
よく小説やドラマの舞台になるけれど、まさか、自分の働く比較的地味な印象の図書館が
こんな風に人気の小説やアニメになるのは、少し意外なのと、ちょっと嬉しい気分。
これらのシリーズ、わたしが勤務する図書館にも所蔵があり、1週間で全て読破しました。
勢いが大切。


物語の内容は、公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる法律として成立した
「メディア良化法」が施行された現代に、武力行使による超法規的検閲に対抗するため
図書館は表現の自由を守るために武装化し、公序良俗を乱すあらゆるメディアを取り締まる権限を持つ
良化特務機関と戦う、という、なんともはちゃめちゃなストーリー(笑)


作者は「図書館の自由に関する宣言」を見かけたことがきっかけとなったというだけあって
日野図書館が出てきたり、図書館の内部の業務など、図書館のいろいろなことを
よく勉強して書いたのだなあという印象です。


この図書館が良化特務機関に対抗するために設立した図書隊のシンボルマークに使われているのが
カミツレカモミール)。花言葉は「苦難の中の力」。
この物語の中での、キーワードになる花でもあります。



ストーリーは図書館と良化特務機関との抗争をメインにしつつ、基本路線はラブコメです。ベタ甘の(笑)。
主人公・笠原郁とその上官の堂上教官がデートするきっかけになったのもカモミール

そして問題のカモミールティーである。
花だけを淹れたものがポットごと出てきた。
「色だけ見ると緑茶みたいだな」
言いつつ堂上がカップに注いで匂いを嗅いだ。
「前にお前からもらったオイルとはちょっと違う感じが……」
「香りを重視して抽出してるものとはやっぱり変わってくると思いますよ」
「でもまあクセのない匂いだな。飲みやすそうだ」
「味はどうですか?」
「そう急かすな」
堂上はせっつく郁をいなしてからカップに口をつけた。
ハーブティーってのを飲んだことがないから分らんが、飲みやすい。やっぱり緑茶に似てるような気が……」
「気分を落ち着ける効果があって、グッドナイトティーとも言われてるんですって」
「お前、明日から事務所に常備して毎日飲め」
「うわ、厭味!」
ぷうっと膨れた郁も自分の分を注いで飲む。



わたしもカモミールだけのお茶は初めてだけれど、読んだ通り、色は薄い緑茶みたい。
味は緑茶にはそれほど似ていないような。もう少しほんのり酸味があるさわやかな味です。



ボタニカルズというお店で購入しました。
ひとり分で、大さじ一杯が目安。お湯は100度より少し低い温度が良いそうです。
3分ほど蒸らしてできあがり。ハーブティーの中ではかなり飲みやすいお茶です。
夜が涼しくなってきて、あったかいお茶が飲みたくなる今からの季節、
安眠、リラックス、疲労回復に効果があるそうなので、寝る前にゆっくり飲むのによさそうです。


ところで、「図書館戦争」を改めて読んでみようと思ったきっかけは
新潮文庫から出ている同じ著者による「レインツリーの国」のあとがきを読んだからでした。
図書館シリーズ第2弾「図書館内乱」の表紙に「レインツリーの国」の表紙が描かれているのですが
「図書館内乱」に「レインツリーの国」という本が登場して、それにまつわる事件が起こるという
なんだか面白いリンクのさせ方に興味を持ったからでした。
実は「図書館内乱」を書いた時には「レインツリーの国」は架空の本だったのですが
後から作者が「レインツリーの国」という小説を出版してしまったという、なんとも遊び心のある刊行のいきさつ。
ちなみに「レインツリーの国」も主人公たちは本が好きだったり
映画化が決まった「阪急電車」も図書館をきっかけに出会うカップルが出てきたり
つくづく有川浩さんは図書館や本が大好きなんですね。
図書館で働いたことがある人ならば、この本を読んで「ああ、そうそう」とか
「いやあー、いくらなんでもそれはないでしょう」なんて、ディテールも楽しめる本かもしれません。

図書館戦争

図書館戦争

図書館内乱

図書館内乱

図書館危機

図書館危機

図書館革命

図書館革命

別冊 図書館戦争〈1〉

別冊 図書館戦争〈1〉

別冊 図書館戦争〈2〉

別冊 図書館戦争〈2〉