今日のごちそう/橋本紡”ごまかしのカルボナーラ”



「新刊展望」で2007年から2009年まで連載をしていた
『家飯』を改題したという「今日のごちそう」。
23の短編それぞれ「伊達巻」「アンコウ鍋」「のり弁」
ラタトゥイユ」などおいしそうなタイトルがついています。
どれもありふれているような日常の中の、些細な、
あるいは実は大きく心を動かすような、出来事。
さして派手ではない短い物語の連続の
一編一編に入り込めるのは、なんというか、
日常のリアルな食事風景の描写があることかも。
ありふれた毎日に、ありふれたごはんを食べる物語の登場人物が
なんだか身近に感じるような気がします。


そんな23の物語の中から「ごまかしのカルボナーラ」。
別れた彼から教えてもらった料理を
同居する弟に作る主人公の話。
かつての恋人とよく行ったお店とか、よく食べた料理だとか
そういうものを他の誰かと食べて、ふと切なさを感じつつも
そういう積み重ねが今の自分を作り上げてきたのだなと思ったり。


材料は、それぞれのタイトルページに書いてありました。

スパゲティ 300g
卵     2個
牛乳    カップ1
バター   30g
塩     10グラム


特にレシピというようなものはないけれど
短編によっては作り方が細かく描写されているものもあります。

 深めの皿を出し、生卵をふたつ。ボウルなんか使わない。皿に直接だ。フォークで掻き混ぜてから牛乳を足し、バターを多めに入れた。最後に塩だ。
(今日のごちそう/橋本紡 p.49より引用)



これだけだとちょっとフレンチトーストみたい。

 まだ芯があるころ、ザルに取る。しっかりお湯を切ってから、同じ鍋に戻すと、皿で作ったカルボナーラ・ソースを注いだ。実にいい加減なものだった。緩い火にかけつつ、フォークで絡めていく。あっという間にできあがり。
(今日のごちそう/橋本紡 p.51-52より引用)



具もないし、かなり簡易版。まさにごまかしのカルボナーラなのだけど
しっかりコクもあってすごくおいしいんです。

「そう、ごまかしのカルボナーラ
「ごまかしって・・・・・・」
「本当はパルミジャーノとかクリームとかたっぷり使うのよ。だけど、そんなの、いつあるわけないでしょう。どちらも傷みやすいし。だから冷蔵庫にあるもので、それっぽい味にするわけ」
「なるほどね」
「たとえば卵と牛乳だけだとコクが足りないから、バターを足すの。これでクリームを使うのと似たあじになるわけ」
「すごいな」
(今日のごちそう/橋本紡 p.50より引用)


食事を作るのも面倒だけど、簡単に済ませたい時には
だいぶ活躍しそうなレシピです。卵かけごはんのパスタ版というか。
あれば粉チーズを足したり、ベーコンとかハムとかを入れれば
もう立派なカルボナーラと言ってもいいかも。
お皿でソースを作って、パスタを茹でたお鍋で
ソースと和えたりするので、洗いものも少なくて済むかしこいお料理です。
こういうラクチン手抜き料理、覚えておくと良いですね。


今日のごちそう

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