/ノルウェイの森 ”天ぷらと青豆のごはん”

「どれくらい私のこと好き?」と緑が訊いた。
「世界中のジャングルの虎がみんな溶けてバターになってしまうくらい好きだ」と僕は言った。
「ふうん」と緑は少し満足したように言った。「もう一度抱いてくれる?」
 僕と緑は彼女の部屋のベッドで抱き合った。雨だれの音を聞きながら布団の中で我々は唇をかさね、そして世界の成りたち方からゆで玉子の固さの好みに至るまでのありとあらゆる話をした。


ワタナベと緑と同じ年の頃にこの小説を読んで
こんな素敵な会話を交わす男の子と女の子は一体どこにいるのだろう、と
きっと、見つかるわけもないのに、あたりを見回しました。


今も昔も、儚いガラスみたいな直子よりも
食欲と性欲に忠実で、強い光と濃い影を持つ緑に
ずっとずっと魅かれていました。

夕方になると彼女は近所に買い物に行って、食事を作ってくれた。僕らはテーブルでビールを飲みながら天ぷらを食べ、青豆のごはんを食べた。
「たくさん食べていっぱい精液を作るのよ」と緑は言った。「そしたら私がやさしく出してあげるから」
「ありがとう」と僕は礼を言った。



六月の雨の日、ワタナベと緑が台所で食べた天ぷらと青豆のごはん。
作中で、なんの天ぷらかは描かれていないのだけれど
わたしは、海老と三つ葉かき揚げと、らっきょうと桜海老かき揚げにしました。
らっきょうの天ぷらは、友だちに教えてもらったもので
今の、ちょうどこの時期にしか食べられない旬の野菜。
きっと、料理の得意な緑は、その時の旬のものを
上手に取り入れたりしたんじゃないかな、なんて想像します。
薄切りにしてかき揚げにしましたが、揚げてしまうと
思っていたほど辛みもなく(わたしには少し物足りない)
お塩でさっぱりいただくと、ビールに良く合います。


それにしても、ほとんど揚げものをしないものだから
今回は天ぷらはちょっと・・・難しかったです。
青豆のごはんも、お豆にしわがよってしまいました。
ゆでたあと、お鍋ごと冷水で冷やすとお豆にしわがよらないそうです。
そして、一緒に炊いてしまうと色が悪くなってしまうので
茹で汁でお米を炊いた後、最後にお豆を入れるといいです。



布団の中で話したゆで玉子の好みの固さ、ふたりの好みはどんなだったろう。


ノルウェイの森(下)

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