世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド”図書館のリファレンス係の女の子に作る夕食”


世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」もまた村上作品の中でも美味しそうなお料理がたくさん出てくる作品のうちのひとつ。
以前にストラスブルグソーセージの煮込みも作ったけれど、なぜならば、登場人物のひとりである図書館のリファレンス係の女の子が
”機関銃で納屋をなぎ倒す”ほどの食欲の持ち主だからなんですよね。
今回も、主人公がその図書館の女の子のために作る手料理を。文庫版だと上巻に出てくるお料理です。

 彼女を待つあいだに、私は簡単な夕食を作った。梅干しをすりばちですりつぶして、それでサラダ・ドレッシングを作り、鰯と油あげと山芋のフライをいくつか作り、セロリと牛肉の煮物を用意した。出来は悪くなかった。


このくだり、さらっと読んでしまえばそれまでなんですけれど、油あげのフライっていうのがとっても気になってました。
鰯は手びらきにしてあげたら鯵フライみたいな感じで美味しそう。山芋はきっとほくほくして美味しそう。
だけど、問題は油あげのフライ。揚げものを、さらに揚げる?
わたしだったら冷蔵庫に油あげがあっても絶対フライっていう発想はないですもの。
でも今回は果敢にも油あげをフライにしてみました。作り方も普通に卵、小麦粉、パン粉をつけて揚げるだけ。



鰯は予想通りとても美味しいフライになりました。魚のフライって本当に美味しいですよね。たまに食べたくなります。
手で簡単に開けるし、身に残った小骨も揚げてしまえばほとんど気にならなくなります。



長芋も揚げたことで独特の粘り感が出て美味しかったです。
気持ち、揚げ時間を少なくしてもっと歯触りを残したかったかなという感じでした。塩で食べても美味しそう。


そして問題の油あげのフライ。断面はこんな風になりました。



食べてみると、なんとも言えない不思議な食感と味。油あげと言わないと全く何かわからないんじゃないかなと思います。
油あげというより湯葉っぽい感じに近いような。
でも不思議と美味しいんですよね。チープさとかB級感でいえばハムカツっぽいイメージなんだけれど
ハムカツほど具も主張しない。でもソースにも合うし、なんだか不思議なサクサク食感だし妙にビールに合います。
とにかくおすすめ!というほどでもないんですけれど、何か揚げものをするときに
冷蔵庫に1枚、2枚油あげが残っていたら、試しに作ってみてはいかがでしょう。ちょっとおもしろいお料理です。
それにしてもこういうレシピ、どうやったら思いつくんでしょう。春樹さん、すごい。


それからもう一品、セロリと牛肉の煮物。セロリを煮物に使う場合は、ほとんどトマトソース。
ミネストローネとかそういう感じです。あとはポトフとか、どちらかというと洋風が多いですが、今回はなんとなく和風で。
でもこのあいだも作ったばかりですが、牛肉とセロリって相性がいいみたいです。
作り方はいたって簡単に。和風だし、塩、酒、みりんを煮立たせて、牛肉に火がとおったら薄切りのセロリを入れて
軽く火をとおしたら片栗粉でとろみをつけて、器によそってから黒胡椒ひくだけです。
セロリがいい味を出すのでシンプルだけれど、とろみをつけることで、煮汁もよくからんで薄味でも十分美味しくいただけます。



ちなみに物語の中では、これ以外にもみょうがのおひたし、いんげんのごま和え、おろししょうがをかけた厚あげ、
ごはんにおみそ汁、フランクフルト・ソーセージ、ポテト・サラダにわかめとツナをまぜたもの、
最後にチョコレート・ケーキまでたいらげてしまうのだから、それはもうまさに機関銃で納屋をなぎ倒す勢い。
わたしもリファレンスもやる図書館員でしたが、さすがにそこまでは食べられないので
今回はもちろん、フライと煮物は別の日に作って食べました。


世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド


世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉 (新潮文庫)

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